エイプリルフール用の記事として書いていたのですが、
うまくまとまらずにボツにしていた文章です。
エイプリルフールはとっくの昔に終わったので、
初めにネタバラシしてしまいますが、
前半フィクション、後半ノンフィクションです。
後半はなしの、一話完結です！
2023年2月。
首都圏中学入試、中盤戦の早朝のことです。
僕は生徒の激励のために、とある中学校の校門の前に立っていました。
2月のスタートで厳しい結果をもらった受験生に、
一言だけお話し、平常心でいつも通りに試験に臨み、
実力を発揮してもらうためです。
その中学校を受験する生徒は、その子だけでした。
僕は絶対にその子だけは見逃さないよう、目を皿のようにして、
凍てつく寒さに震えながら待っていました。
コロナウィルスの影響で入試激励そのものが消滅したはずだったのですが、
それが嘘であるかのように、
校門の前には多くの塾の先生が待ち構え、
独特の熱気に包まれています。
そして、少ない合格者数を考えると多すぎるほどの受験生が、
引き締まった面持ちで目の前を通り過ぎていきます。
ほどなくして、その生徒が緊張した様子で現れましたが、
表情に硬さはなく、やってくれそうな雰囲気に満ちていました。
これなら安心だ、普段通りやれば、合格は間違いないはずだ、
と胸をなでおろしつつ、
送り出すことができました。
夜には、無事に合格のご連絡をいただき、
その子の進学先はその学校に決まりました。
いただいたお電話では、
「本番前に先生がいてリラックスできたのがよかったかも」
というありがたい言葉までいただき、
よい形になってよかったと、心から喜ぶことができました。
とまあ、こういう展開になればよかったのですが、
実際はまさにとんでもない展開になったのです。
激励には誰一人、来ていなかった。
まず、生徒の激励に来ている先生は誰もいませんでした。
コロナウィルスの影響で、激励文化は関東ではほぼ消えつつあります。
来年はどうなるんでしょう？
僕だけが校門の近くにいました。
これはこれで、さみしいものです(笑)
附属小学校の生徒から、不審者を見る目で見られる。
しかも、その学校は附属の小学校がすぐ近くにあり、
入試の朝も生徒たちが登校していました。
かなり多くのご父兄や先生がたが朝の誘導、ごあいさつのために、
校舎の外にいらっしゃり、
ほぼ全員から、
「コイツ、何者だ？
不審者じゃないだろうな？」
という目で見られていました。
僕は優しい微笑みで大人、生徒たちに目礼していましたが、
小学校の職員室では、
「校門前に不審な人物あり、要警戒」
という警報が鳴っていた可能性があります。
そして痛恨！ なんと激励したかった受験生には会えなかった！
そして、ここが一番肝心なところ。
僕は、ちょうど開門する瞬間に、
中学校の校門を50mくらいのところを歩いて、
校門方向に向かっていました。
一団が校門を入っていくところは見えたのですが、
後で聞いたところ、激励したかった生徒は、
その先頭集団にいたそうです。
そう、入試激励の先生が最も恐れる事態。
見逃しです。
集合時間より１時間以上前なので、
開門前に到着している受験生はほとんどいません。
念のため、基本的に開門時間には到着するようにしているのですが、
十数秒遅かった…………！！
それにより、僕はもう入室している生徒を待って、
１時間以上寒さに震えていたわけです。
不審者と間違われながら。
恥ずかしすぎます。
痛すぎます。
しかも、後でその生徒から実際に言われたことは……
その子がしっかり合格し、進学したことはほんとうです。
ただ、その嬉しい報せを聞いた後でお母さまから、
「え、先生、あの日来ていたんですか？
よかったです！
会っていたら、緊張が増して受かっていなかったかもしれません！」
という率直すぎるおことばまでいただきました。
僕は「そうかもしれませんね。あはは……」と、
ひきつった笑いをすることしかできませんでした。
あんなに待っていたのに、会っていたら不合格だったとは、
僕の存在とはいったい…………。
それでも、しっかり合格をいただけたのですからよし！
ということにしておきましょう。
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