【中学受験】12/24は年に一度の特別な日。その秘密をこっそり明かします。

 
１２月２４日はいつも、夕方には授業を終えることにしています。
もう何年も続けている習慣です。
 
いつもはついつい教室に残って塾の仕事をしてしまうのですが、
この日ばかりは早く帰るように気をつけています。
 
うちに戻る前に、近所のお気に入りのカフェに立ち寄り、
ホットミルクを注文します。
熱々でカップも持てないようなミルクに、
たっぷりの蜂蜜を加えて、ふうふうしながらゆっくりと飲みます。
 
今晩の分厚いリストをチェックし、
段取りを考えながら、30分くらいかけて。
 
 
周りの席に座った人たちはみな明るくて、
いつもとはどことなく違った、
華やかで浮かれたような空気が流れています。
１年で、この１日にしか味わえない雰囲気です。
ふと、今日の授業中の会話を思い出します。
 
「えー、そんなの、いるわけないじゃん！！」
 
「本当は、お父さんとお母さんなんだよ！」
 
「ていうか、実在するとしたら、不法侵入だよね！！」
 
「そんなことも知らないの？？」
 
 
そんな様子を、微笑ましく見ていました。
彼らは未来のある世代。
嘘のようで本当のこと、本当のようで実は嘘であることも、
これから色々と経験していくのでしょう。
 
 
時計を見ると、思ったより長い時間が立っていました。
慌てて席を立ちます。
 
１年に１度しか会わないマスターに、
ホットミルク一杯で長居して申し訳ない、
ということを一言お詫びしながら。
 
「とんでもない、毎度ありがとうございます。
 
今晩は寒くなりそうですから、
気をつけて行ってらっしゃい」
 
 
えっ!？
こんな時間に、行ってらっしゃい？？
まさか僕のことを‥‥‥。
 
いや、まさかまさか。
日頃から細心の注意を払っているので、
気づいているはずはありません。
きっと、全てのお客さんにかけている言葉なのでしょう。
 
 
外に出ると空気が澄んでいて、
夜空を駆けるのには絶好の日和だということがすぐにわかりました。
やはり星がたくさん見える夜空の下の方が、仕事もはかどるというもの。
身体もミルクですっかり温まり、コンディションは万全です。
 
歩いて５分もしない自宅に戻ると、
１年で１度の大仕事に興奮した相棒が出迎えてくれました。
先代から受け継いだベテランですから、
もうおじいちゃんと言っていい年齢で、普段は寝てばかり。
 
ですが、あまりおおっぴらに外を散歩したりできない分、
思う存分に駆けることのできる１日に張り切っているようです。
毎年、少しずつ鼻がどんどん赤くなってきているような気がしますが、
今年もきっといい働きをしてくれるでしょう。
 
この仕事を引き継いでから10年以上着ていた赤いコートも、
今年は新調しましたから、気持ちもよりいっそう引き締まりますね。
 
 
ソリもメンテナンスからかえってきたばかりで、用意は万端です。
相棒に一言かけて、手綱を握ります。
初めは荷物がたくさんあるので、ものすごく重いのですが、
ソリがスピードに乗って地面を離れると、
全くその重さを感じなくなる理由は、未だによくわかっていません。
 
気分を出すために今年から増やしておいた鈴が、
シャンシャンと賑やかな音を響かせます。
 
明日の朝の授業までには戻らないといけないので、急ぎ足です。
僕の担当の日本エリアは、少子高齢化なんて言われますが、
１人でまわるには広すぎるくらい。
ですが、明け方までにしっかりとすべてのご家庭をまわらなくては。
 
さあ、出かけましょう。
 
 
 
 
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