数年前の中学受験生のお話です。
その生徒は、要領のいいタイプの子ではありませんでしたが、
特に算数はしっかりとした理解があり、
真面目に学力を積み重ねてきた子でした。
入試直前の時期には、
算数は「習ったことのある処理を再現できる」レベルから、
「習ったことを武器にして自分なりに考えられる」レベルに達しており、
難関校で戦えるような実力になっていました。
(中学入試算数では、この壁を破れるかどうかが、
とても大切です)
ところが、1月の埼玉受験では非常に苦戦しました。
順当にいけば合格するはずの学校に、なかなか合格をもらうことができません。
コンディションを本番に向けてピークに上げていくことができず、
むしろ下降線で本番に入ってしまった?
試験場の空気に呑まれている?
理由としてはこういったところだと思います。
しかも、埼玉の学校はほぼ得点の開示があり、
どれも合格ラインに不足しているのは5点以下ばかりなんです。
とにかくどのテストもあまりにも惜しく、
どうして受からないんだ、と
あまりにも接戦の不合格ばかりで、
本人の悔しさ・やるせなさは、容易に想像できるほどでした。
1月終盤では、補欠候補止まりの試験までありました。
そのうえ、偶然が重なって「追試」という中学受験では珍しい入試を受ける展開になり、
そこで本来は存在しなかったはずの入試でまで不合格をくらうという、
相当に難しい展開で1月を終えました。
印象に残っているのが、
そんな終盤でお父さんとお話した時のことです。
「先生、さっき補欠候補だったことは、息子に伝えました。
さぞがっかりするんじゃないかと思って、
元気づけようと思って話したんですが…………。
「お父さん、僕が落ち込むと思って、
気を使ってくれているの?
別に大丈夫だよ。
次で頑張って、2月に受かればいいんだから!」
と言われました。
本人の気持ちは落ちていないので、
頑張れそうです」
そうこなくては!!という思いでした。
その子はようやく本番の空気に慣れたのか、
2月1日は見事に合格を勝ちとってくれました。
中学入試の3週間はとても長かったはずですが、
これから学生としてキャリアを積むうえで、
大きな経験になったのではないかと思います。
中学受験はただの通過点にすぎませんが、
願わくば、強い人間に成長する機会であってほしいと思っています。
それでこそ、長い時間とエネルギーをかけて準備する価値があります。
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